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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)6873号 判決 1988年3月18日

原告

石井錦

被告

京王キャブ株式会社

主文

一  被告は、原告に対し、金四四万五三五二円及びこれに対する昭和六二年六月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金一二〇万二八九九円及びこれに対する昭和六二年六月七日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  第一項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件事故の発生

(一) 日時 昭和六一年八月二七日

(二) 場所 東京都墨田区江東橋三丁目一三番地先京葉道路上

(三) 加害車 事業用普通乗用自動車(練馬五五き四七三五号。以下「加害車」という。)

右運転者 佐々木健二

(四) 被害者 原告

(五) 態様 原告が加害車から下車した際加害車のドアが閉められ、原告は右ドアに左手を挟まれた。

2  責任原因

被告は、加害車を所有し自己のため運行の用に供していたものであるから、加害車の運行供用者として自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、本件事故によつて原告が受けた人的損害を賠償する責任がある。

3  原告の損害

(一) 原告は本件事故のために左手第三、第四指挫傷の傷害を負つた。

(二) 右受傷に伴う損害の数額は次のとおりである。

(1) 通院交通費 金六万二六二〇円

(2) 休業損害 金七七万五二七九円

(3) 慰藉料 金四八万円

(4) 弁護士費用 金一八万五〇〇〇円

(三) 損益相殺 金三〇万円

よつて、原告は、被告に対し、自賠法三条に基づき、前記3(二)の損害合計金一五〇万二八九九円から(三)の金三〇万円を控除した残額金一二〇万二八九九円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和六二年六月七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3の事実は知らない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録記載のとおり。

理由

一  請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

二  同3の事実(原告の損害)について

1  原本の存在及び成立に争いのない甲第三号証の一ないし三、成立に争いのない乙第一号証及び原告本人尋問の結果(但し、後記措信しない部分を除く。)によれば、原告は、本件事故のため、左手第三、第四指打撲挫傷、抹梢神経炎の傷害を受け、昭和六一年八月二九日から同年一一月四日までの間友仁病院に通院して治療を受けたことが認められる。

2(一)  通院交通費 金〇円

原本の存在は争いがなく原告本人尋問の結果により原本の成立の認められる甲第四号証の一、二及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、通院に際しタクシーを利用したことが認められるが、原告の症状に照らし、タクシーでの通院が必要不可欠であつたとは認められないし、他の交通機関を利用した場合の交通費の額を算出する証拠もないから、原告の通院交通費の請求は認めることができない。

(二)  休業損害 金三九万五三五二円

前認定の原告の治療経過に原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一号証及び原告本人尋問の結果(但し、後記措信しない部分を除く。)を総合すると、原告は本件事故当時日伸産業株式会社の経営するクラブ「エテルナ」にホステスとして勤務し、一日当たり平均金一万一〇七五円の収入を得ていたものであるところ、一般にホステスは右収入のうちから衣装代、化粧代、交通費及び高際費等の経費を支出しなければならないこと、原告は前記受傷のため昭和六一年八月二七日から同年一〇月一六日までの五一日間休業を余儀なくされたことが認められる。そして、原告においては右収入のうち三割は経費として支出していたものと認めるのが相当である。原告本人の供述中経費に関する部分は経費を全く支出しなかつたという不合理なものであつて措信することができない。そうすると、原告の休業損害の額は金三九万五三五二円となる。

(三)  慰藉料 金三〇万円

原告の受傷の内容、治療経過等諸般の事情を総合すれば、原告に対する慰藉料としては金三〇万円をもつて相当と認める。

(四)  損益相殺 金三〇万円

損益相殺金三〇万円は原告の自認するところであるから、これを前記損害額から控除すると、その残額は金三九万五三五二円となる。

(五)  弁護士費用 金五万円

弁論の全趣旨によれば、原告は本件訴訟を原告訴訟代理人に委任し相当額の費用及び報酬の支払を約しているものと認められるところ、本件事案の性質、審理の経過、認容額に鑑みると、原告が本件事故による損害として被告に対し賠償を求めうる弁護士費用の額は金五万円をもつて相当と認める。

三  結論

以上の事実によれば、本訴請求は、前記二2の損害合計金四四万五三五二円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和六二年六月七日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を、各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡本岳)

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